明日はキャンブリックティーを

30代女性の日々徒然。

【読書】「読む」って、どんなこと?(高橋源一郎)

 

本を読むときは、その著者を信じ、その著者の言葉を信じ、素直に文章を読むこと。

読書とはそういう姿勢が望ましい、と以前読んだ本に書かれていました。私もそう思います。

でも、ちょっと検索してみるだけでも、なかなかそうはいかないことがわかります。

ネットでは、その文章に書かれてもいないことを勝手に読み取り、やたらに取り上げて感情を振り乱している人、たくさんいる。

もちろん、読む人に誤解を与えるような、行き届かない文章が全くないわけではない。でもねえ、とため息が出るこの感じ。

けれど、見も知らぬ他人に「あるべき読書の態度」を求めてもしょうがない。まずは自分がその態度を守ろう、と決めて読書するようにしています。

 

やっと本題。今回読んだこの本を書かれた、高橋源一郎さん。私が参加している読書会のメンバーや、家族からよく聞く名前なので、書店で見つけた時にご縁を感じて買い求めました。

この本にも、「文章の読み方」が書かれています。それも、小学校の教科書から抜粋する形で。手堅いですね。でも、読んでいくと……

本に巻かれた帯には、「作家40年、初の読書論!」とあります。高橋さんの作家人生の長さを指しているのでしょう。

40年の時間はさすがです。落ち着いた、過不足のない、易しい文章でした。するするっと読めた。

それでいて、これは高橋さんの好まれる小説や詩やエッセイを紹介する形で進んでいく本なのですが、そのどれにも高橋さんの抱く親しみが感じられました。

過剰な楽観も悲観もない文章は、頼もしさを感じます。ただそっと疑問や課題を提示していく。読者の私は、自然に促される形で思考する。

誤解を恐れず言えば、この本は、「疑え」と言っています。二文字で言ってしまうと身も蓋も無い。けれど、確かにそう言っている。その不穏な二文字を、こんなにも静かに穏やかに促せるのは、やはり文章の力量によるのだと思います。

疑え。信じるに足るばかりの世界ではないから。そして、愛しむ価値あるからこそ。そんな風に言われている気がしました。

いい本でした。そしてこういう本を読むたび、「紹介されている本を端から買えるお金と読む時間があれば」と思ってしまいます。なかなか叶いません。涙。